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令和最初の夏に感じること

令和最初の夏は、7月中旬までの日照不足から打って変わって猛暑が続いています。連日体温並みの気温に辟易している人が多いのではないでしょうか。8月頭にJ2の解説をする為に金沢を訪れましたが、関東同様に35度近くあり、日本列島全体が猛烈な暑さに覆われていると実感しました。

来年同時期にいよいよ東京オリンピックが開催されますが、選手への負担はもちろんのこと、世界中から訪れる観客が心配です。具合が悪い際の病院での応対で発生する言葉の問題など、この異常な暑さ対策を万全にして頂きたいと切に思います。

 

そんな中で、スポーツ界にニューヒロインが誕生しました。樋口久子さん以来43年ぶりにゴルフ全英女子オープン優勝をした渋野日向子選手です。昨年7月にプロテストに合格した新鋭は、今季2勝して出場となった海外メジャー大会で初出場にして初優勝を飾りました。海外のメディアからは「スマイリング・シンデレラ」と名付けられ、プレー中にも笑顔を絶やさず、ラウンドの間にファンとハイタッチをしたり、時にはサインに応じたり、今までの常識では考えられない選手です。私も趣味でゴルフを楽しみますが、これほどまでにメンタルを求められる競技はないのではないでしょうか。ホール毎に調子が変わってしまい、同じ調子を保つことの難しさを痛感します。渋野選手は、ボギー以下となったホールの直後にバーディー以上を出す“バウンスバック率”が選手の中で断トツ1位です。あの笑顔の裏側には、ミスを恐れずに果敢に攻めるメンタルの強さがあるのでしょう。

 

また、男子バスケットボール界に誕生したニューヒーローは、富山県出身の八村塁選手です。日本人初のNBAドラフト1巡目でワシントン・ウィザーズに入団しました。バスケットボール後進国である日本が、これから八村選手を中心に世界でどのような戦いを見せてくれるのか非常に楽しみです。おそらく、サッカーのようにプロリーグが創設されてから人気が出て、観客と競技人口が増えて(普及)、協会にお金が入ってくるようになり(市場)、そのお金が強化に回り強くなるという(勝利)、トリプルミッションが成立して、バスケットボール界が今後発展し続けることはほぼ間違いないでしょう。

 

サッカー界では、18才の久保建英選手がマンチェスターユナイテッドに次いで世界で2番目の収益を上げるスペインのレアル・マドリードへ入団しました。移籍金が発生しないフリートランスファーでの異例の移籍となりますが、以前同じスペインのFCバルセロナのアカデミー組織に在籍していたこともあり、スペイン語が堪能でコミュニケーションには問題ありません。かつ日本人離れしたメンタルの持ち主ですので、海外で実績を残すハードルは他の日本人選手より低いと推測します。

 

今後世界を舞台にして戦いを求めるアスリートは益々増えてくることが予想され、国内において世界で活躍する人材を育てる環境を作ることが重要だと私は考えます。長年日本では、小学生時代を起点として大学生に至るまで、スポーツが学校の認知度アップに利用され、勝利至上主義の世界で成り立ってきました。それにより、数多くの選手が消耗して消えていくこととなりました。

夏の全国高校野球岩手県予選大会、大船渡高校のエースで『令和の怪物』と称される佐々木朗希投手が、甲子園出場がかかった決勝戦で連投を回避、チームは敗戦となり大騒動となりました。大船渡高校の國保陽平監督は、前日完投した佐々木投手を決勝戦に登板させませんでしたが、彼は筑波大学でスポーツ科学を専門的に学び、連投が肩や肘にどのような影響を与えるのか熟知した上での決断であり、素晴らしい英断であったと思います。これも、大船渡高校が公立高校で、國保監督は地方公務員であるからこそできた決断ではありますが、今後の高校野球に一石を投じる出来事となったことでしょう。

 

今後、日本のスポーツの世界には若くて才能のあるアスリートが多数生まれてくるでしょう。その際、アスリート自身もスポーツ科学や医学を学び、自らを守る術を知る必要があると思います。スポーツが体育から脱皮している今こそ、スポーツの本質的なことを考え、誰のために、何のためにスポーツをするのか、スポーツが存在しているのかを追究していかなければいけないと感じる令和最初の夏となっています。

著者プロフィール

佐々木 達也

佐々木 達也(東京都出身)

・城西大学 経営学部 准教授  スポーツマーケティング・マネジメント分野領域を専門とする。
・早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。早稲田大学スポーツ科学研究科修了。
・大手総合広告代理店にてスポーツに関する業務に携わり、Jリーグクラブ勤務後、金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科講師を経て現職。現在もJ2ツエーゲン金沢シニアアドバイザーを務める。